「NPOのための志的勉強会」に参加しました

ソーシャルメディア

8月24日、「NPOのための弁護士ネットワーク」が開催する「NPOのための志的勉強会」を受講しました。41回めとなる今回の勉強会のテーマは「ネットでの誹謗中傷、予防と対策」。法律の解釈については弁護士の方におうかがいしないと分からかないことも多く、ときどきこの勉強会に参加させていただいています。

どのNPOでもターゲットになりうる

企業でもGoogleマップを利用した名誉棄損、またサーチエンジンなどでの検索結果にNPOに関する否定的な書き込みが上位に来るように書き込むなどの行為が最近増えているそうです。講師の方が「検索結果の汚染」という表現をされていたのが印象的でした。また、誹謗中傷だけでなく、炎上の問題もあります。

NPOリスク・マネジメント・オフィスとしても、NPOやNPOの創設者などに対するネット上での「攻撃」のリスクなどについてアドバイスをしたことがあります。」データを持っているわけではなくあくまでも感覚ですが、日ごろから団体として、あるいは団体のトップがメディアで取り上げられているなど、有名だったり目だったりすると、活動の意義や運営の健全さとは関係なく、「攻撃」の対象になりやすい気がします。また、事実とは異なる「批判」や、他団体への「批判」を「お前たちもそうなんだろう?」と矛先を向けられ誹謗中傷の被害をうけるといったことは、インターネット普及以前から、いわゆる「オフライン」の世界でもありました。

たとえば、オンラインではない例として、かつて街頭募金で集めた寄付を自分の娯楽のために使っていたケースがあります。ある人物が、もともと自分で使うために街頭募金を集めていたことが報道された直後は、本当に必要な人に支援が届くように活動しているNPOの街頭募金がしにくくなってしまったことがありましたし、街頭に立ったスタッフやボランティアに心ない言葉をかけていく人もいたそうです。オンラインでも同様のことが、もっと簡単にできてしまいます。

「事実か評価か」

今回の勉強会で参考になった点の1つに、名誉棄損となるかどうかの判断として「事実か評価か」を判断するいうことがありました。事実の場合は法的な措置はとりづらく、発信者の感想の場合も名誉棄損は難しい傾向にあるそうです。しかし、発信内容が虚偽なら名誉棄損と判断される可能性があり、対応もしやすいとのことです。批判的な発信があれば、まずは

  • 事実関係
  • 発信者
  • 団体への影響

を調査し、対応するかどうかを判断することが必要とのことでした。これは、リスクの影響を判断し、どれに優先的に取り組むか選択するということにも共通します。また「投稿記事の証拠化」も必要です。見ると嫌な気分になる書き込みは、目にしたくなくてつい削除して終わりとしてしまいたくなりますが、書き込みを印刷したり文書として保存したりして、記録に残すことが大切です。対応が必要と思った発信については、削除請求や投稿記事削除の仮処分、発信者に関する情報開示請求等の対応をしていくことになるとのことです。

誹謗中傷が名誉棄損にあたるか、なんらかの対応を取る必要があるかどうかは、弁護士など法律の専門家の方にお聞きしないと判断がしにくいと思いました。

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そなえる大切さ

ソーシャルメディアのリスクをあらためて認識する」でも最近ふれましたが、誹謗中傷や炎上を防ぐために、NPOとしても工夫を凝らしていくことが大事だと、勉強会に参加してあらためて感じました。

Facebookページやslackのチャンネル、メーリングリストなどの、自分たちが管理者として発言の削除権限などがある場合は、削除対象となる発言の基準や削除の場合の手続きなどに同意することを参加の条件にすることや、定期的に基準や手続きを投稿して参加者に喚起していくことも、名誉棄損等の書き込みの予防効果もあるかと思います。言論の自由が保障され、安心して意見交換ができる場を創ることに注意しなければなりませんが、だからといってどのような発言も許されていいものではなく、またどのような発言でも簡単に削除されてもよいわけではないのは、オンラインでもオフラインでも同じです。活動や団体のあり方が(さらに)よくなってほしいからと聞かせてくれる辛口の意見と、ただ相手の気分を害したり活動の妨害をしたり、自分のストレスのはけ口として投げられる発言とは異なります。

発信者の情報開示を求めて訴訟を起こしたり、名誉棄損の賠償請求を請求したりというのは、NPOにとって多くの時間や労力が費やされます。賠償請求が認められ弁護士費用も請求できても全額認められるかわかりません。裁判までいかなくても、発言の任意削除を求めるのにも、やはり時間や労力が費やされます。また、組織内外での信用や関わるモチベーションの低下、寄付や助成金の減少や支援離れなどの恐れもあります。

今回の勉強会では、申し込み時に質問としてお送りした内容もカバーしていただけましたし、他の参加者の方からの質問でもさらに気づかせていただいた部分もありました。また日程が合えば参加させていただきたいと思います。

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(中原)