2023年のご挨拶

2023年を迎えました。2023年が、みなさまにとって充実した一年となりますよう、お祈りいたします。

昨年、海外の団体が主催したシンポジウムをオンラインで視聴していたときに、あるパネリストの方が「今、私たちは戦争、貧困、感染病という問題に直面している。100年前の状況と変わらない」という趣旨の発言をされていて、ハッとしました。100年前と今では異なることも多いですが、確かにそういう共通点を指摘することもできると思いました。

止まらない「NPOの不祥事」と逆境

2022年は(「も」?)、NPO(ここでは法人格の有無や種類を問わず、非営利セクターに分類される組織や団体を指します)の不祥事の報道もありました。政府からの給付や補助金の不正受給や不正会計、横領、施設利用者への暴行や虐待、傷害事件、個人情報の漏洩、官製談合などが、その例です。

一方で、一部の報道やSNS等での発信などからバッシングや嫌がらせが続き、活動に影響があるだけでなく、活動の担い手やその活動を通じた支援を必要としている人たちの心身的な安全が脅かされるという事態も起きています。

円安や物価高も私たちの生活に影響し、生活困窮者が増え、自分たちの支援を必要としているのに寄付やボランティア活動ができる人たちが減ってしまう問題に直面したNPOもあります。そして支援を必要としている人が増えているのに、コロナ禍のために活動の担い手や財源の確保が難しかったNPOもあります。

急激な為替の変化は海外で活動する団体にとって深刻な問題です。やっとコロナ禍における行動制限が緩和されたからと、海外からゲストを招いてシンポジウムや交流事業をしようとした団体も計画の遂行にご苦労されたかと思います。コロナ禍の行動制限は緩和されてきましたが、活動や資金調達、担い手の確保には厳しい状況も続きました。

求められる法改正への適用

2023年も、NPOに影響する法改正があります。たとえば、10月1日に消費税法改正は、まだ未確定な部分もありますが、いわゆる「インボイス制度」の動向も見ていく必要があります。法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律(令和四年法律第百五号)も、12月の全面施行に向けて段階的に施行されていきます。2020年6月の育児・介護休業法の改正では、今年4月1日には常時雇用する労働者1,001人以上の事業主は、子育てをしていない従業員を含めた多様な労働条件を整備するための計画の策定・届出・公表・周知や男性の育児休業取得率も年に一度の公表が義務付けられます。「1,000人も雇用していないよ」というNPOでも、多様な働き方・関わり方ができる環境を整える努力をすることは、長期的な視点で多くの人が関われることになり、活動の持続可能性にもつながります。

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「NPOの外付けリスク・マネジメント部門」をめざして

NPOリスク・マネジメント・オフィスでは、今年もNPOの外付けのリスク・マネジメント部門として、市民活動に関わる人の思いを無駄にしない組織運営や活動の進め方を一緒に探究し、実行していきたいと思っています。

昨年は、翻訳のお仕事が増えた年でもありました。みなさんの活動を、地域在住の外国人の方が必要な情報を伝えるため、海外の財団からの助成金を得て活動を広げるためなど、目的や情報を伝える対象の方は様々でした。一方でNPOリスク・マネジメント・オフィスの活動や日本の市民活動に関する英語での情報発信は、思ったほど実現できませんでした。今年の課題の一つです。翻訳のほか、ご自分たちの活動に関する海外の動きについての調査や資料の日本語への翻訳なども受け付けています。

そして、今年は関東大震災から100年です。「いつ来てもおかしくない」と言われる首都直下地震。ほかにも南海トラフ地震や東南海地震など、折に触れてニュースでも話題になります。「いざ」というときの備えには、備蓄や安否確認など、NPOができることは多くありますが、防災と同時に活動の継続や停止、他の団体との協力や再開などの判断などを含めた事業継続計画(BCP)への取り組みが求められます。

リスク・マネジメントに関する研修や取り組み支援等に関するお問い合わせやご依頼は、NPOリスク・マネジメント・オフィスまでフォームからご連絡ください

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

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(中原)