恵方巻と食品ロス
2月3日は、節分でした。4日は立春ということで、あっという間に暦上は、春です。節分の習慣は、地域によってもいろいろ差があるようです。日本の豊かな文化を楽しめる1日になればと思います。
節分の豆まきだけでなく、最近は恵方巻がさまざまな「発展」をとげています。もともと大阪発祥と言われる恵方巻ですが、コンビニがきっかけで全国的に広まったと聞いています。その年の幸運な方角に向かって願いごとをしながら黙々と恵方巻を食べきるとその願いが叶うということですが、食べ方や具材などには諸説あるようです。
近年、恵方巻が大量生産され、保存がきかない具材が使われていることから、売れ残りの大量廃棄が問題視されてきました。
食品ロスへの農林水産省の取り組み
農林水産省では、食品ロス(フードロス)を減らすために啓発等の取り組みを行なっています。日本政府は、生産から家庭での消費までのすべての段階で食べられるのに捨てられてしまうことを「食品ロス」と呼び、その食品ロスを削減するための社会的な取り組みとして「食品ロスの削減の推進に関する法律」(食品ロス削減推進法)を2019年に制定しています。
食品廃棄物と食品ロス(フードロス)の違いは、食品廃棄物は不可食部も含む考え方で、フードロスまたは食品ロスは可食部のみをさします。日本政府は、法律や政府のウェブサイトでは、フードロスではなく食品ロスという言葉の方を使っています。
農林水産省でも恵方巻のロス削減の取り組みを事業者に呼びかけていて、先日ツイッターでご紹介したのですが、農林水産省では、恵方巻のロス削減の取り組む食品小売業者46社をプレスリリースで公表しました。リストアップされている事業者のウェブサイトをいくつかクリックしたのですが、予約販売については情報があっても、残念ながら食品ロス削減への取り組みに関する情報はあまり取れませんでした。情報サーチは続けたいと思います。
恵方巻だけではなく全体の食品ロスは、2019年には570万トンでした。日本人一人あたり約45キロとなり、これは1日お茶碗1杯のご半分ほどに相当するそうです(農林水産省のサイトをご参照ください)。恵方巻のロスは10億円とも言われています。事業系・家庭系のロスがありますが、恵方巻が示すように、予約販売にするなど作ったり売ったりする側の取り組みも、予約する・必要以上に加熱しないなどの消費者側の取り組みも、どちらも大切です。恵方巻(季節食品)に限らず、食品ロスや食品リサイクルに関する農水省のウェブページには「貢献するSDGs」として、取り組みが該当するSDGs(持続可能な開発目標)がリストアップされています。目標12の「生産者も消費者も、地球の環境と人々の健康を守れるよう、責任ある行動をとろう」は、この恵方巻の食品ロスへの取り組みに関するSDGsの目標になるでしょう。
食品ロスのさまざまなレベルに影響するリスク
今年の恵方巻のロスが、少しでも少なくすんでいることを、祈ります。また、恵方巻だけでなく、日ごろから食品廃棄物や食品ロスに取り組んでいる事業者を応援したいと思います。食品ロスは、生産者や流通業者、卸・小売業者、消費者にとっても(肉や魚などの「生き物」も含めて)食べ物もムダにしていますし、その食べ物を育てたり収穫したりする人件費や設備費などのコストもムダにしています。それらのコストのムダが消費者あるいは生産~販売までのどこかで弱い立場の人たちにしわ寄せがいっている恐れがあります。廃棄された食べ物の処理にもコストがかかりますし、地球温暖化にも関係します。一方で、栄養失調の人たちもいるなど、個人としても地球規模でもさまざなリスクに関係する問題です。
自分とどこか遠くの、なんの縁もない人がつながっていることに気づいて興奮して「おじさん」に話したのは『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎著)の主人公、コペルくんでした。オーストラリア産の粉ミルクの缶を見つけて、オーストラリアの酪農家が牛の乳を搾ってから自分の家に届くまでのことを考えて「人間分子の関係、網目の法則」と名づけました。自分と名前も顔も知らぬオーストラリアの酪農家がさまざまな経路を経て網目のようにつながっていることへの気づきは、サステナビリティを考えるうえでも重要な考え方を示唆してくれていると思います。
Six Degrees of Separation
私たちはすべてを「自分ごと」にはできないけれど「自分とのつながり(方)」を想像してみることはできます。「Six degrees of separation(6次の隔たり)」という、自分の知り合いの知り合いの・・・と、自分から数えて6人目をたどれば、世界中の誰とでもつながれるという表現があります。私はこの表現を、アメリカで「six degrees of Kevin Bacon」という形で学びました(笑)ハリウッド俳優のケビン・ベーコンさんを世界の真ん中において、何人たどればケビン・ベーコンさんにたどり着くかという、半ばジョークのような表現でした。
もうすぐバレンタインデーがやってきます。バレンタインのチョコやプレゼントも、環境やロス削減、フェアトレードなどに配慮したものが選ばれる時代になるといいと思います。(昨年「エシカル・バレンタイン」というタイトルの記事を投稿しました。)「高級なチョコもステキですが、エシカルなチョコもいいよ」と、みなさんが周りの人に勧めて、またその人たちが周りに勧めれば、世界で人にも地球にも優しい生産や流通、消費がもう少し広まるかもしれません。
(中原)