リスク・マネジメントを始めるタイミングです

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4月になりました。すべてのNPOが決算月を3月にしているわけではありませんが、委託・助成事業や他の組織と一緒に実施している活動などで、3月が年度区切りということも多いと思います。3月が決算月のNPOの場合、これから年次総会に向けての準備もあり、忙しくなる時期です。今年もオンライン、あるいはオンラインとオフラインのハイブリッドという総会がほとんどかと思いますが、昨年度の経験が活き、混乱も少なくて済むことを願っています。

さらに、4月は新たなスタッフを迎え入れる時期でもあります。先日参加したあるオンライン会議で「今までの忙しさを忘れてしまっていて、コロナ禍が落ち着いて人が戻ってきたら、ついていけるか不安」という意見も聞かれて、たしかにそういう側面もあるなぁと、感じました。「コロナ禍前」を忘れてしまいますね。とくに新型コロナウイルス感染問題が出てきてから関わるようになったスタッフやボランティアは「コロナ禍前」の活動の感覚が共有されていないですから、この先も意識のずれが行動の大きな違いにつながらないよう、意識や情報の共有が必要です。

そんな新年度ですので、あらためて、リスク・マネジメントに取り組む、あるいはご自身の団体のリスク・マネジメントを見直すタイミングとしてとらえていただきたいと思います。

いくつか、とくにお伝えしたい点を4つ、挙げてみます。

1.ボランティア保険の更新を

4月で新事業年度だというNPOもそうでないNPOも、ボランティアを受け入れている場合は、ボランティア活動保険の更新を忘れずに行なってください。各ボランティアが自分で更新する場合は、更新の案内をすることと、ボランティア活動を始める前に更新されている(つまり、今年の4月1日から有効の保険に加入している)ことを確認してください。保険の内容に変更がないかどうかも、忘れずに確認するようにしてください。

2.リスクの洗い出しを

人の出入りがあれば、組織のリスクも変わります。終了する事業もあれば、新たに始まる事業もあると思います。パートナーとなる外部組織も変わるかもしれません。新型コロナウイルス対策を1年程度続けてきた結果と、現状だけでなく、(難しいですが)今後の状況などを予測しながら、対策をアップデートしていく時期でもあります。リスクの洗い出しや、この1年でどのリスクが自分たちにとって、より脅威になったか。あるいは、うまくコントロールできるようになったか。新たに優先順位を高くするべきリスクはなにか・・・といったことを、ぜひ検討してみてください。そのことが、どのリスクの優先順位が高いのか、そしてどのように対処するかといった、リスク・マネジメントのすみずみに影響してきます。

3.理事や監事の役割と責任を確認する

4月から、あるいは3月で決算期をむかえて次の総会で新たに理事や監事となる予定の方もいらっしゃるでしょう。新任理事・監事だけでなく、あらためて理事や監事が自分たちに求められている役割と、組織で負うことになる責任を確認していきましょう。とくに非常時においては、積極的な貢献が求められている理事も多いと思います。ガバナンスがしっかりしていないと、リスク・マネジメントも心もとないものとなります。

4.大事なことを見誤らない

リスク・マネジメントでは、リスクの内容をできるだけ正しく把握することはもちろんですが、同様に「何のためにしているか、自分たちは何を大事にしているのか」を見誤らないことも重要です。組織としてのミッションと、スタッフやボランティアがNPOでの活動を通じて実現したいことや身につけたいスキルを、組織としても個人としてもあらためて考えてみましょう。オンラインでもオフラインででも、事務局長や理事、プロジェクトのマネージャーによる面談などを予定するのも一案です。

何が「正解」かが分からない難しい時期だからこそ

コロナ禍を乗り切るためにと、この1年、様々な工夫をNPOのみなさんはしてきたはずです。事業を再開するタイミングをどうするかなど、活動の1つ1つが難しい判断を必要としています。地域での人々の分断を避けたい、自分たちの活動を知らないが支援を必要とする人たちになんとか自分たちのことを伝えたい、支援活動に必要な資金(寄付)や物資が調達できないなど、NPOをめぐる環境は厳しいことの連続です。人と人がつながったり、人が社会的な活動に参加する機会となったりするために、今こそNPOの活動が必要とされているのに思うように活動できません。マネジメントではよく「正解は1つではない」と言いますが、コロナ禍において「正解があるのかわからない」状況が続いています。

こういう難しい時期だからこそ、組織内での対話と、外部のNPOやNPO支援者と支援情報などを積極的に収集し活用することが必要だと思います。決してNPOどうしで横並びの対応をするために話し合おうということではありません。資金的な面でいえば、たとえば、中小企業庁の「中小法人・個人事業者のための一次支援金」などの制度もあります。1人ではできないことがNPOではできることもあるように、1つのNPOではカバーしきれない活動や情報収集が、他のNPOやNPO支援者とともにできることもあります。Facebookでもそのような目的で作られたグループもあります。一緒に乗り切りましょう。

新年度ということで、気持ちをあらたに、まわりを見渡して自分たちがするべきことを考える時間をぜひ、作ってみてください。

(中原)