「協力」にはテクノロジーが必要

ゴールデンウィークは、個人としてもNPOとしてもがっつり休むという方や、カレンダー通りという方、総会の準備だという方など、さまざまな過ごし方があると思います。久しぶりに帰省や旅行という方や、ゴールデンウィーク中に久しぶりにイベント等を実施できるという方もいらっしゃると思います。

『協力のテクノロジー:関係者の相利をはかるマネジメント』

「少し読書の時間もとれるかな」という方は、今月、学芸出版社から出版された『協力のテクノロジー:管理者の相利をはかるマネジメント』(Amazonアフィリエイトのリンクです)をお読みになってはいかがでしょうか。

この本の出版までのプロセスの一部に、中原もほんの少しだけ関わらせていただきました。最終的に出版された原稿は、当初の分量の半分くらいかもしれません。それでも、A5サイズで300ページ超の本になりました。「余白なんてもったいない!」と言わんばかりの仕上がりです。読むにはかなり覚悟が必要です。出版前の原稿に一通り目を通させていただいている私も、正直に申し上げると、まだ完成した本を読めていません。

多様な行動主体が関われる

今まで考えていた「協力」とは異なる考え方やアプローチに気づかせてくれます。「あること」の達成を通じて、協力相手も自分もめざしていた目標が実現できるという協力のあり方は、本来はそれほど理解が難しいものではないと思います。最終的にめざすことが違っても構わないというのは、協力の幅をひろげるためにとても有効な考え方だと思います。

たとえば、ある地域で里山を守りたいという活動があったとして、環境保護活動に関わっていない人や里山には関心があまりない人は、里山保全活動には参加してくれないかもしれません。しかし、たとえば子どもたちの自然体験活動の場がほしい地域の子育て支援団体や学校や、地産地消をめざす地域の飲食店、(私は何でもSDGsとアピールすることにはためらいますが)SDGsの取り組みの実績としたい企業、あるいは交流や地域となじむ機会を作りたい在住外国人支援団体などが、それぞれの目標達成のために活用できる里山の整備に協力してくれる可能性があります。

協力相手を模索する入り口で「里山に関心が持てないなんて、一緒に活動したくない」と協力の可能性をつぶしてしまうのではなく、むしろそこに可能性を見出す考え方としても、協力のテクノロジーは使えると思います。多様な分野に関わる組織や個人が多様な形で取り組みに関われる手法として、この本に書かれていることはとても参考になると思います。参加者が多様になれば、その取り組みを実現させるためのスキルやネットワークを、協力者たちが持ち込んでくれる可能性もあるわけです。日ごろから、多様な人たちが関わることで広がるチャンスがあるとお話している私にとって、協力のテクノロジーは「大変だけど、ワクワクする」手法です。

可視化して共有する大切さ

多様なバックグラウンドを持つ人や組織が関わることは、いままで暗黙の了解で進められてきたことについて説明や話し合いに時間を取られることを意味します。しかし、それは常に1つの組織のなかでも、新しくスタッフや理事、ボランティアなどを迎え入れる時には必要なプロセスでもあります。状況やめざすこと、めざすことを達成するプロセスなどを可視化して共有することは、組織内でも個人的な関係でも、思い違いを防ぐために大切です。説明や話し合いを丁寧にする組織は、リスク・マネジメントの取り組みにも必要な基盤である情報共有やコミュニケーションに必要な組織の風通しの良さが備わっていると感じます。

この本は、「おたがいさま」という思いやりや助け合いとはまた別の形で力を合わせる方法を協力構築サイクルとして考え方やプロセスを可視化しています。可視化することで、他の人と共有できますし、だからこそ「テクノロジー」と呼べるものだと思います。

「ゴールデンウィーク中にこもって読書三昧だ」と思っている方には、ぜひ、この本を候補に入れてみてはいかがでしょうか。

それでは、みなさま思い思いのゴールデンウィークをお過ごしください。

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(中原)