年末の掃除で安全確保
冬至を迎え、これから少しずつ日が長くなっていくと思うと、年末でありながら新しいサイクルが始まる感じもします。
年末は、ご自宅もオフィスも大掃除をされる方も多いと思います。ぜひ、災害に備えることを考えながら、大掃除をしてはいかがでしょうか。。
最近では、雑居ビルで放火が原因とみられる火事が発生し、多くの犠牲者が出てしまういたましい事件も発生しました。非常階段を使えないように外から細工してあったという報道もあります。非常階段が細工されて避難できないということを想像して毎日確認するということは、考えもつかなかったと思います。さまざまな視点から、安全や避難経路の確認をしてみてください。
建物の構造は自分たちではどうにもできませんが、もし、非常口や避難はしごが設置されている窓などの前を塞いでいるものや、地震の際に倒れる家具などがないか確認し、少しでも安全で、命が助かる避難経路を確保する・確認するようにしてください。消火器を自分で設置している方は、使用期限などの確認も必要です。
ピンとこない・・・?
21日、内閣府の中央防災会議の日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震対策検討ワーキンググループが発表した文書によると、マグニチュード9クラスの日本海溝・千島海溝地震で想定される被害は、北海道から千葉県の太平洋側だけでなく、秋田県と山形県でも被害が想定されています(詳細は、ワーキンググループのウェブサイトをご覧ください)。文書はPDFフォーマットです。
報道では「死者数最大19.9万人」という数字が大きくクローズアップされている気がします。これは日本海溝モデルで最大死者の想定です。しかも、地震の揺れで倒壊した建物による死者が日本海溝モデルで約60人、千島海溝モデルでは約70人と想定されているのに、津波による死者が日本海溝モデルで約6千人~約19.9万人、千島海溝モデルで約2.2万人~約10万人とのことです。津波による想定最大死者数が、2011年の東日本大震災の津波で亡くなった方や行方不明の方の10倍にのぼることに呆然としました。防潮堤や沿岸部の土地のかさ上げ、海に近い場所で避難できる高い場所のほか、高台への避難しやすい道路を整備した場所も含まれていてもそれほどの最大の被害が想定されるとは、よほどの規模の地震と、それによって発生する津波の脅威が大きいと考えられているということだと思います。
南海トラフ地震は、やはり内閣府の中央防災会議が2014年にマグニチュード8~9クラスの地震が30年以内に発生する確率を70~80%と発表してから、すでに7年が経とうとしています。
日本海溝・千島海溝での地震にしろ南海トラフにしろ、そして首都直下地震にしろ、専門家がさまざまな予測をしたり、被害に備えるよう警鐘を鳴らしたりしていますが、本当にそんなに大きな被害になるのかと、にわかには信じがたいという人も多いかもしれません。20万人近くの死者が出るかもしれないという数字も、大きすぎて想像がつかず、どうしたらよいのかと、感じてしまう人もしれません。あるいは、日本の人口を考えれば、自分がその20万人に入る確率は低いのではないかと思う人もいるでしょう。
「自分(たち)は大丈夫」と、脳が言う
自分が被災する、あるいは災害で犠牲者になるということは想像したくないことです。そこで自分が意識しないうちに「自分(たち)は大丈夫」と脳が判断しようとします。見たり聞いたりするすべての災害や事故、事件が自分にふりかかることとして考えていたら、大変なストレスがかかります。(余談ですが、このような理由から「自分ごと(にする)」という言葉が、ときには危険を伴うと感じています。使うべきではないとは言いませんし、私も今でも使うことがありますが、使い方を注意するようにはしています。)
東京都も、首都直下地震が発生した場合の被害の想定を10年ぶりに見直します。10月には最大震度5強の地震も発生しました。この年末の大掃除の時期は、自分のいる場所で、地震や火災、台風などが起きたときに自分たちが生き延びられるか、冒頭でお伝えしたように、倒れて通路を塞いでしまうような家具などがないか確認し、もしあればしっかり固定するようにしてください。もし地震で帰宅できないなどの状況になったときに、せめて数日(一般的には3日)自力で過ごせるように、水や食料、電気やトイレ、通信手段や情報を得る手段を確保できているか確認してみてください。
さまざまな「備え」方
東京都では、さまざまな防災に関する冊子が発行されています。今日のトップの画像は、私が自宅の近くにある自治体の今年施設でいただいてきたものです。
- 東京マイ・タイムライン:風水害のときの避難や安否確認について時間を追って行動を確認するものです。このサイトからデジタル版も作れます。ただ、作るのがちょっと大変そうで、後回しにしていることを告白します・・・。
- 東京くらし防災:女性視点の防災です。冊子は、コンパクトなB6サイズと大きなA4サイズがあります。
- 東京都防災ガイドブック(日本語版・多言語版):自然災害だけでなく、事故やテロなどへの備えなどについて、情報が掲載されています。音声情報へアクセスできるQRコードが掲載されています。
みなさんがいらっしゃる自治体でもいろいろな情報を発信されていないか、ぜひ、調べてみてください。このような情報を得ながら、自分の活動やくらしの拠点の災害リスクや、協力できそうな人たちがいるかまわりを見回すことは、適切に備えることの一歩になります。
年末の大掃除、そして「お疲れ様」と職場の仲間や家族と1年をふりかえるときに、ぜひ、安全確保についての意識や情報を共有して、少しでも対策をとってみてください。このあとご自身の団体が3月を年度末としていなくても、自治体や財団などのスケジュールでどうしてもバタバタしてきます。12月が年度末だった団体は、このあと年次総会などの準備もあると思います。新しい年が始まるとどうしてもバタバタしてしまいますし、テレワークが増えた団体の方は、なかなかリアルに顔を合わせる機会がいまはないかもしれないので、年末のお掃除の機会を活かすといいと思います。スタッフのみなさんが自宅の防災に取り組むよう促すことも、組織のリスク・マネジメントとしては重要です。大切な仲間も安全確保に取り組んでいると分かっていれば、いざというときに他の人も少しは心の支えになると思います。
もし建物の外側でも清掃することがあれば、この際、近所の方が通ったときに挨拶してみるのもいいかもしれません。「ここにはこういう人たちがいるんだな」と気に留めてもらえれば、災害のときだけでなく普段の活動でも協力してくれるかもしれません。「災害などの非常時への備え方」は、いろいろあると思いますし、重要なのは「普段のあり方」です。
最後に、災害へ備えようと後押ししてくれるかもしれない本を、ご紹介します。(Amazonのアソシエイトリンクを貼っています。)
岩手県陸前高田を題材にした防災ドキュメンタリー『あの街に桜が咲けば』の監督・原作著者の小川光一さんの本です。
【参考】
- 首都直下地震の被害想定 東京都が10年ぶりに見直しへ(2021年10月22日 17時38分発信)
- 最悪19万9000人が死亡。日本海溝沿いの巨大地震の被害想定、政府が発表(2021年12月21日 18時50分発信)
(中原)